カレンダー②『雑節』

『雑節(ざっせつ)』

 第1回は、年中行事や季節の挨拶などで使われる『二十四節気』についてご紹介しました。今回は節分や彼岸など、二十四節気を補う『雑節』についてご紹介します。
 「雑節」は、「二十四節気」や「五節句」以外の季節の節目となる日のことで、中国から伝わった二十四節気や五節句とは異なり、日本人の生活文化から自然発生的に生まれた日本独自の民俗行事・年中行事を暦に表したものです。貴族や武家の儀式ではなく、主に生活や農作業と照らし合わせた季節の目安となっており、日本の気候風土に合っているため、一年間の季節の移り変わりを二十四節気よりも的確に表しています。

 節分、彼岸、社日、八十八夜、入梅、半夏生、土用、二百十日、二百二十日の9つが主な雑節です。節分や彼岸など、現代の生活でもなじみ深いものが多いと思います。

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■それぞれの雑節の読み方、意味等は下記をご覧ください。

節分(せつぶん):2/3頃(立春の前日)
「季節を分ける」ことから節分といい、本来は「立春、立夏、立秋、立冬の前日」ですが、現在は「春の節分」だけを「節分」と呼ぶようになりました。季節の分かれ目は邪気が入りやすいということから、邪気祓い行事が行われます。旧暦で新年は立春にあたり、節分の豆まきは新年を迎えるための邪気祓い行事になります。節分に食べると縁起が良いとして、「太巻き(巻き寿司)」を節分の夜にその年の恵方に向かって、無言で願い事をしながら丸かじりする「恵方巻(えほうまき)」も有名です。

彼岸(ひがん):春分と秋分をそれぞれ中日とする7日間
彼岸は他の仏教国にはない日本独特の行事で、先祖の供養や墓参りを行う慣習があります。彼岸を迎えれば残暑や寒さが和らいでくるため、「暑さ寒さも彼岸まで」というようになりました。お彼岸にお供えする「おはぎ」を「ぼた餅」とも呼びますが、同じものです。小豆の粒を季節の花に例えたもので、春のお彼岸では「ぼた餅(牡丹餅)」、秋のお彼岸では「おはぎ(お萩)」です。

社日(しゃにち):春分と秋分に最も近い戊(つちのえ)の日
春の社日は「春社」、秋の社日は「秋社」とも呼ばれ、生まれた土地の産土神(うぶすながみ)にを祀る日とされています。「土」という意味がある「戊」の日に豊作祈願をするもので、「社」とは土地の守護神のことを表しています。春の社日は種まきの時期、秋の社日は収穫の時期にあたるため、重要な節目と考えられてきました。なお、社日はその土地ごとの神様を祝うので行事の形は様々です。

八十八夜(はちじゅうはちや):5/2頃(立春から88日目)
八十八夜が過ぎれば、気候が安定し遅霜(晩霜)が降りることが少なくなるので、昔から農家では八十八夜を農作業の目安とし、この頃から本格的に農作業にとりかかりました。八十八を組み合わせると「米」という字にもなりますが、稲の種まきを始める時期でもあり、五穀豊穣を願う特別重要な日とされてきました。八十八夜といえば茶摘みを思い浮かべますが、一番茶摘みが始まる頃でもあります。

入梅(にゅうばい):6/11頃(立春から135日目)
暦の上での梅雨入りで、実際の梅雨入りとは異なります。農作業をする上で雨期を知ることはとても重要で、江戸時代に「入梅」が雑節の一つになったと言われています。つゆは「梅雨」と書きますが、梅が実る頃ということで「入梅」と名付けられました。なお、北海道では梅雨はありません。「入梅鰯(いわし)」といい、梅雨時の真鰯は一番脂がのっておいしいとされています。

半夏生(はんげしょう):7/2頃(夏至から11日目)
梅雨の末期で、田植えは「夏至の後、半夏生に入る前」に終わらせるものとして、農作業の大切な目安とされてきました。「半夏」は「烏柄勺(からすびしゃく)」という薬草のことで、この薬草が生える時期を指した名称だといわれています。関西地方ではタコの足の様に稲がしっかり根を張るようにとタコを食べ、近畿地方ではもち米と小麦を合わせてついた「半夏生餅」を作って田の神に供えるなど、各地に半夏生ならではの風習があります。

土用(どよう):立春、立夏、立秋、立冬の前各18日間
四季の土用のうち、夏の土用は梅雨明けと重なることが多いため重要視され、土用と言えば主に「夏の土用」を指すようになりました。「土用の丑の日」は、土用の期間中の「丑の日」を指します。うなぎ・うどん・うりなど「う」のつくものを食べて夏バテ防止をする風習があり、特にうなぎは疲労回復効果のある食べものとして「土用の丑の日はうなぎの日」という風習が定着しています。ちなみに2016年の土用の丑の日は7月30日になります。

二百十日(にひゃくとおか):9/1頃(立春から210日目)
稲が開花する重要な時期で、台風に見舞われることが多いため、農家にとっては油断のならない「厄日」として警戒し、風を鎮める祭りを行って収穫の無事を祈るようになりました。越中八尾の「おわら風の盆」のような風を鎮めるための風祭りが全国各地に残っています。統計で過去10年間の台風が上陸した日をみると、特別二百十日に多いということはないそうですが、先人たちの経験に基づいた生活の知恵が暦となっています。

二百二十日(にひゃくはつか):9/11頃(立春から220日目)
二百十日と同様の雑節で、台風に見舞われることが多いため、この日も農家にとっての「厄日」として警戒されてきました。二百十日よりも二百二十日の方が台風シーズンに近く、統計的には二百二十日前後に台風が上陸しています。農作物への被害を最小限に抑えるため、二百二十日以前に台風への対策が必要として、10日違いで二百十日も設定して早目に厳重な警戒をしたと言われています。

2016-11-11