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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


10-青果物の流通 鮮度保持の技術と輸送

(1)温度

青果物は、流通中も呼吸などの生命活動を続け、呼吸により糖分を消耗する。野菜の呼吸は温度の影響を大きく受け、野菜の温度を10℃下げると、呼吸の速度が約半分になることが知られている。同時に呼吸は水を蒸散し、青果物自体の水分含有量が高いため、環境次第で水分を失って萎(しお)れることもある。したがって、一部の例外はあるが、青果物の鮮度を保ち、品質低下を防ぐためには、収穫してすぐに冷やすことが重要である。

【植物の呼吸】 C6H12O6(糖)+6O2(酸素)→6CO2(二酸化炭素)+6H2O(水)+エネルギー

表1に青果物の種類による貯蔵最適温度と貯蔵限界期間を示すが、貯蔵温度は凍結しない範囲でなるべく低い方が望ましい。収穫後に青果物の温度を下げてから輸送する「予冷」という処理も不可欠で、低温を好むレタスやホウレン草などの葉もの野菜などに導入されている。

多くの野菜では0℃付近が貯蔵適温である。しかしトマト、ナス、キュウリなど、熱帯・亜熱帯地域に起源を持つ野菜の場合には、低温で貯蔵すると表面に凹凸が生じたり、内部が黒ずむなどのいわゆる「低温障害」を起こすことがあるので、それぞれの野菜の特性に合った温度で貯蔵することが重要である。バナナを冷蔵庫で保存すると黒くなるが、黒くなったバナナはまさしく低温障害の状態である。

表1 野菜の最適貯蔵条件一覧表(出典:カルフォルニア大学デイビス校)

図

(2)湿度と酸素、二酸化炭素、エチレン

青果物の貯蔵は、温度だけでなく、高湿度で、低酸素・高二酸化炭素の環境が望ましい。貯蔵環境のガス組成をコントロールすることや包装資材によって鮮度保持する技術も進んでいる。水分蒸散を抑制するためのフィルムやガスの透過性の違いにより酸素と二酸化炭素の濃度を最適な条件に保持するフィルムなども開発され、実用されている。

写真

写真1 鮮度保持フィルムで包装されたエダマメ

また、「エチレン」は果実などの追熟を促進する「ホルモン」である。発生したエチレンは他の野菜の呼吸や品質変化を促進する作用があるので、エチレンを多く生成するトマトやメロン、リンゴなどの青果物を他の野菜と一緒に貯蔵する場合には、別に包装するなどの処置が必要となる。

(3)振動

振動などで品質低下する果実などは、緩衝材を使って鮮度・品質を保持する輸送も一般化されており、高級果実など輸出の際にも使われている。


野菜は大きく分けて、ホウレンソウやキャベツなどの葉菜類、トマトやキュウリなどの果菜類、ダイコンやニンジンなどの根菜類に分けることができる。葉菜類は表面積が大きく呼吸量も多いため、日持ち性が悪い。果菜類や根菜類は、葉菜類に比べて表面積が小さく、日持ち性は良いといえる。一般的に野菜を貯蔵する環境下での湿度は90%以上と高い方が望ましい。ただし、カボチャ、タマネギ、ショウガ、ニンニク、ヤマイモなど、品目によっては湿度が50~80%程度の低めの方が長持ちするものもあるので、注意が必要である。

一般的な冷蔵庫や貯蔵庫では水分が失われやすいので、薄めのポリ袋や、濡れた新聞紙で野菜を包装することも萎れ防止に効果がある。

プラスチックフィルム素材での包装では、中に入れた野菜の呼吸によって酸素濃度が下がり、二酸化炭素が適度に蓄積するため、野菜の呼吸が抑制されて品質の低下が遅くなる。このような効果を利用して、鮮度保持包装した野菜も市場に出回っている。ただし、ガス透過性の低いフィルムに密閉してしまうと、流通中の温度が高くなった場合には、酸素不足により異臭が発生して商品性を失う場合があるので、特に注意が必要である。


日本では多くの野菜がほぼ周年供給されるが、一部の野菜は端境期(はざかいき)を中心に不足するため輸入される。また、価格の安さから輸入品が選択される場合もある。特に惣菜・外食企業では価格面もあるが、安定供給の視点から輸入品を選択する場合が多い。

野菜の品目によって輸入される割合や輸入先は様々で、カボチャはニュージーランド、メキシコなど、タマネギは中国、ニュージーランド、ゴボウやネギは中国、パプリカは韓国やオランダからの輸入量が多い。

その一方で、東アジア諸国の近年の経済発展に伴い、日本産野菜の高い品質や栽培管理への安心感が評価されて、2015年の野菜や果実の輸出額は350億円(前年比44%増)となった。現在、野菜の輸出額は、農産物輸出額の約5%であるが、今後の伸びが期待されている。

野菜の輸出入では、日本国内よりも移動距離や移動時間が長くなるために、流通期間中に低温が途切れないようにする「コールドチェーン」を徹底させることが重要である。良い品質で収穫して低温で出荷した野菜も、途中で温度の高い環境に置かれると、表面に結露して腐敗の原因となったり、高温のために呼吸が激しくなって急速に品質が低下することもある。そのため、品質が低下しやすく単価が高い野菜の場合には航空便を使った短時間輸送や、3℃程度に冷却できる「リーファーコンテナ」を使った船便による輸送が行われる。


<参考HP>