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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


20-酪農と牛乳生産

酪農とは、牛乳生産を目的に乳牛を飼養し、牛乳を生産する農業経営を指すが、英語のdairyには牛乳を加工してチーズやバターを製造することも含まれる。

わが国における乳牛飼養頭数はおよそ135万頭、その内経産牛(子牛を産み、乳を生産できる雌牛)が100万頭で、そのほとんどが黒白または白黒斑を特徴とするホルスタイン種である。生乳*1の生産量は減少傾向で、2015年は741万トンである。約53%が飲用、47%が加工用である。飲用の牛乳のうち、ヨーグルトなどの発酵乳は、機能性成分に着目され、生産を伸ばしているが、生乳、加工乳ともに減少傾向にある。

牛乳の発酵製品であるチーズ(→5章-52参照)の人気が高まり、消費も伸びているが、国産チーズの消費量は大きくは伸びず、チーズの自給率は16%に過ぎず、23万トンが輸入されている(2014年度)。牛乳乳製品の自給率は重量ベースで63%であるが、飼料自給率を考慮したカロリーベースでは27%である。

昭和50年前後には 4500kgであった経産牛1頭当たりの乳量は、2015年にはほぼ8500kg/年に達した。乳牛飼養農家は1万7千戸で、年数%の割合で減少しているが飼養頭数は維持されており、飼養規模が拡大している。それに伴い、放し飼い方式、ミルキングパーラー*2、搾乳ロボットや哺乳ロボット、TMR(Total Mixed Ration)方式*3による飼料給与法などの普及が進んでいる。

図1に牛乳工場の工程を示すが、農場で搾乳された牛乳は、タンクローリーで集められ工場へ運ばれ、細菌や成分の検査を経て、貯乳タンクに送られる。遠心分離機やろ過器で細かい異物を取り除き、ホモジナイザーで牛乳の中の脂肪の粒を均一化(ホモジナイズ)する。ホモジナイズ処理をしない牛乳は「ノンホモ牛乳」と呼ばれる。その後、熱による殺菌処理を経て充填包装され、出荷となる。この間、温度は10℃以下に管理されている。

図1 牛乳の製造工程(出典:一般社団法人Jミルク「牛乳・乳製品の知識」)

*1 生乳

牛から搾乳した状態の殺菌されていない状態の牛乳

*2 ミルキングパーラー

一度に何頭かの搾乳を行う搾乳専用施設のことで、牛をつながずに自由に歩き回れるスペースを持った「フリーストール式」の牛舎で使用される。牛が搾乳時間になると、自分でミルキングパーラーに入ってきて搾乳の順番を待ち、搾乳機などにより乳を搾ってもらい、搾乳が終わると牛が自分で出て行く。

*3 TMR(Total Mixed Ration)方式

栄養価の高い濃厚飼料と藁などの粗飼料を混合し、栄養価の高い飼料を配合する施設のこと。


食品衛生法で原料乳(生乳)の細菌数は400万/ml以下、牛乳の細菌数は5万/ml以下とされている。生乳には乳酸菌などの有用菌を含め、細菌が含まれており、牛乳の保存・流通のためにも殺菌が必要である。

牛乳の殺菌方法には「低温保持殺菌法(LTLT法)」「高温短時間殺菌(HTST法)」「超高温瞬間殺菌(UHT法)」といった方法がある。UHT法では耐熱性菌もほとんど死滅し、LTLT法と比較して手間がかからず賞味期限が長いことから、日本の市販牛乳ではこの処理法が多い。また、「超高温滅菌殺菌法(UHT滅菌法)」の135~150℃で1~3秒間殺菌し、気密性の高いアルミコーティング紙パックなどに無菌充填したものは「ロングライフ牛乳(LL牛乳)」と呼ばれ、未開封の状態で長期間(3か月間程度)常温保存可能とされる。

表1 牛乳の殺菌法

殺菌方法 加熱温度・時間 備考
低温保持殺菌(LTLT法) 63℃で30分間 パスチャライズド牛乳(低温殺菌牛乳)と呼ばれる。
高温短時間殺菌(HTST法) 72~78℃で15秒間程度
超高温瞬間殺菌(UHT法) 120~135℃で1~3秒間 耐熱性菌はほとんど死滅する。大量生産に向いている殺菌方法。

牛乳の主成分はたんぱく質、脂質、炭水化物(乳糖)であり、含有量は種により異なる。「乳脂肪分」以外の固形物を「無脂乳固形分」と呼ぶ。牛乳は日本人に不足しているカルシウムを豊富に含み、他の食品に比べてカルシウムの吸収率も約40%程度と高い。また、鉄分や食物繊維、ビタミンCとビタミンDが不足している点を除けば、栄養的にはほぼ完全な食品である。たんぱく質の80%はカゼインで、残りが乳清たんぱく質である。水分中に離散している脂肪やカゼインの微粒子が光を散乱させて白く見える。

乳糖(ラクトース)は加水分解酵素「ラクターゼ」により分解・吸収される。大人ではラクターゼの腸内分泌が少なくなり、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人がいるが、消化不良や下痢などの症状を呈する場合「乳糖不耐症」と呼ばれる。


食品衛生法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)において、牛乳は原材料を生乳(原乳)100%とし添加物を加えない「無調整牛乳」、「成分調整牛乳」と生乳以外の原材料を含む「加工乳」等に分類される(表2)。

「無調整牛乳」は生乳成分を調整していないため、冬場に成分が高まり夏場には脂肪分が減るなどの季節変動を示す。成分調製牛乳は生乳から乳脂肪など成分の一部を除去したもの (無脂乳固形分8.0%以上)で、このうち乳脂肪が0.5~1.5%のものを「低脂肪牛乳」、0.5%以下のものを「無脂肪牛乳」という。生乳を主原料とし脱脂粉乳やバターなどの乳製品を加えたものが「加工乳」である。

「乳飲料」とは、生乳や乳製品を主原料とし、カルシウムやビタミンなどの特定の栄養素を強化したり、果汁やコーヒーなど乳製品以外のものを機能的な要素を加えたものが「乳飲料」である。乳飲料の表記に「ミルク」は使えるが「牛乳」は使えない。「乳飲料」のもう1つのグループとして、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳などがある。これは乳固形分3.0%以上の乳成分に、コーヒーや果汁などに糖分を加えた嗜好飲料的なものである。

表2 牛乳類の成分規格(出典:Jミルク「牛乳・乳製品の知識」)

種類別 生乳の使用割合 成分
乳脂肪分 無脂乳固形分
牛乳 生乳100% 3.0%以上 8.0%以上
成分調整牛乳
低脂肪牛乳 0.5%以上1.5%以下
無脂防牛乳 0.5%未満
加工乳
乳飲料 乳固形分3.0%以上

<参考HP>