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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


22-日本の漁業、漁業管理

​日本は海に囲まれた国土で、狭い面積ながら、海岸線の長さが約3万km(日本の調査では35,558km、アメリカの調査結果では29,751km)と世界で6位である。また、国連海洋法条約により定められた、漁業を排他的に行う権利が与えられる、排他的経済水域(EEZともいい、自国海岸基線より200海里、約370kmの範囲内の海)は、世界でも6番目の広さを誇る。EEZ内にある日本の海は魚の種類も豊富で、暖流と寒流がぶつかり合う豊かな漁場が形成され、日本は世界でも最も魚を食べる国の一つとなっている。

​しかし、最近では魚の消費は減少を続け、平成18年には肉の消費量がはじめて魚の消費量を上回った。世界的には経済発展や健康志向などを背景に、水産物の消費は増えているが、日本はその逆である。調理に手間がかかり、価格も相対的に高い魚を食べる機会が減っている。また、生産の現場では漁業者の高齢化や後継者不足、魚価の低迷やコスト増による経営不振などの課題を抱え、さらには気候変動や海洋環境の悪化や乱獲などを背景に国際的な資源管理が強化されて、経営環境がますます厳しくなってきている。

図

図1 わが国周辺に流れる主な海流と多種多様な魚介類

(出典:水産庁「水産業をめぐる情勢の変化 水産業をめぐる情勢の変化」平成23年7月)


2章-23以降で取り上げるように、漁業は、魚を獲るか育てる(養殖)か、あるいは、漁場が海か河川や湖沼かによって、大きく四つの種類に分けられる(表1)。いずれの漁業もただ魚を獲るだけでなく、環境保全や地域文化との深い関わりがある。また、どのような魚種をとっているかは、図2に示す。

表1 漁業の種類

海面 海面漁船漁業 沿岸漁業 主に10トン未満の船を使い、沿岸で行う小規模漁業、定置網・地曳網漁業。船を出さず貝や海藻を採ることも含む
沖合漁業 10トン以上の動力漁船を使用する漁業のうち、遠洋漁業、定置網漁業および地曳き網漁業を除くもの
遠洋漁業 大型船を使って公海や海外のEEZでも操業し、農林水産大臣の許可・承認等が必要な漁業
海面養殖業 海面でぶりや真鯛、まぐろ、真珠、ほたてがい・かき、わかめなどを人工的に養殖する漁業
内水面 内水面漁業 河川・湖沼などで行われる捕獲漁業
内水面養殖業 うなぎ、鯉などの淡水魚を河川・湖沼などで人工的に養殖する漁業

図2 遠洋・沖合・沿岸漁業別の魚種別生産量(出典:水産庁、2014年)


海を泳いでいる魚は、誰の所有でもないので、漁獲された時から所有権が発生し、先に獲ったものが勝ちという「先獲先占」の原則が貫かれている。そのため、何ら漁獲を制限するルールがなければ、自分が獲らなければ、他者が獲ってしまう可能性が高いので、われ先に魚を獲ってしまう資源乱獲の状態(「コモンズの悲劇」とも呼ばれる)に陥りやすくなる。資源の再生産には時間がかかるので、日本ではこのような不毛な競争による資源悪化の事態を避けるために、資源を管理する公的・自主的なルールが発達している。

代表的な公的管理制度の一つは漁業権制度である。漁業権は都道府県知事が漁業協同組合などに、漁場の区域、対象魚種・漁法などを特定して免許するものである。漁業権を行使する漁業者は決められた漁法で、期間を守って漁をすることが求められる。いま一つは許可制度である。回遊魚などの移動範囲の広い魚種や外国EEZで操業する遠洋漁業や沖合漁業は農林水産大臣や県知事の許可等をもって、操業場所、漁獲方法、操業期間などが決められて漁業が行われる。また、国連海洋法条約の発効を受けて、1996年に「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」(TAC法)が成立し、サンマ、マアジ、サバ類、マイワシ、スルメイカ、スケトウダラ、ズワイガニの7つの魚種を対象に、年間の漁獲量の上限を決める漁獲可能量(TAC)制度が導入されている。さらに、2016年から資源枯渇が心配されているクロマグロの幼魚について、国際的な協定に基づき、TAC管理を実施している。

​自主的な資源管理の取り組みとしては、1980年代中ごろから「資源管理型漁業」と呼ばれる漁業者による自主管理、あるいは漁業者と行政が協力して行われる「共同管理」「コ・マネジメント」などの取り組みが盛んに行われてきている。


<参考HP>