本文へ

ホームミールマイスター WEBテキスト ロゴ(一社)日本惣菜協会

ホームミールマイスター WEBテキスト

HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


24-水産物の消費をめぐる動き

水産物は良質な動物性たんぱく質として、昔から日本人の食卓に欠くことのできない食材である。1980年代までは水産物は動物性たんぱく質の主要な供給源としての役割を果たしていた。その結果、日本では刺身や寿司に代表される魚食文化が発達し、それが90年代以降に広がる世界の和食ブームを支えている。

水産物は生命を維持する上で必要不可欠な9種類の必須のアミノ酸を含有している。よく知られているのは多価不飽和脂肪酸であるDHAとIPA(慣用名EPA)であり、それらは心臓や血管疾患のリスクの低減、血中の中性脂肪の低下、関節リウマチの症状の緩和の効果が高く評価されている。その他にも、小魚にあるカルシウムや海藻類に含む食物繊維なども、子どもの成長や高齢者の健康維持に大きく貢献している。


世界の食用魚介類供給量の推移をみると、総供給量は年々増加し、1961年には4千万トン未満であったのが、2011年に1億2千万トンを超えるようになり、同期間における1人当たりの平均供給量も、9.0㎏から18.9㎏へと倍増している。世界の水産物消費拡大の背景として、人口の増加や流通インフラ整備にもとづく消費人口の増加、新興国においてみられる経済発展に伴う可処分所得*1の上昇による消費拡大、欧米などでみられる健康・ヘルシー志向や安全・安心指向にもとづく消費拡大などが挙げられる。日本の魚介類の1人当たり供給量は、世界の平均水準に比べ、1961年には約5倍に達したが、2011年には約2.5倍となり、その地位は大きく低下するようになった。

*1 可処分所得

実収入から非消費支出を差し引いた額のことであり、いわゆる手取り収入を指している。 【資料:総務省統計局】


魚介類は昔から和食として重要な食材として使われてきた。しかし、日本では2000年代に入ってから、漁業生産の減少に、食料輸入の増加などによる食生活構造の変化、鮮魚の水揚減少や肉類に対する相対的な高価格傾向、魚の食べにくさ・料理しにくさなどが加えられて、魚介類の消費が減少するようになった(図1)。水産物消費において「魚離れ」の現象が再び指摘される所以である。特に1970年代に入ってから、日本人の食生活が急速に洋風化し、肉類の消費が増えつづけて、2011年には1人当たりの年間肉類消費量がついに魚介類を逆転するようになり、国産水産物の消費拡大が重要な課題となった。

図1 日本の魚介類と肉類の1人当たり年間消費量の推移(資料:農林水産省「食料需給表」)


魚介類の消費拡大を図るために、官民挙げて様々な取り組みが展開されている。例えば、2012年3月に、政府は「魚の国の幸せ」プロジェクトを開始し、その一環として全国漁業協同組合連合会を中心に水産物の食用方法等を簡易にすることを図るファストフィッシュ・プロジェクトを推し進めている。大日本水産会でも2012年から「おさかな食べようネットワーク」が設置され、全国の食品企業、民間団体、学校などと連携しながら、生産から消費までの情報交流及び相互協力を図り、水産物の消費拡大を目指している。

他方、子どもの成長に必要な栄養を確保するだけでなく、魚食習慣を身につけることも重要であるとの観点から、学校給食に基づく食育教育が近年注目されている。食育は若い世代に魚食文化を継承させる役割が期待されている。近年、関係団体が地物の魚介類を学校給食の食材として用いて給食メニューを開発したり、漁業者や流通業者が「出前授業」に出かけて魚の知識や食用価値を生徒に教えたりするなど、様々なチャネルを通じて、魚食文化の普及が図られている。


<参考HP>