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HOME MEAL MEISTER 03調理と衛生


33-食品の味・味覚

私たちが感じるおいしさには、舌で感じる味だけでなく、匂いやこくなどの風味、食感や温度などの食味、そして、外的・内的な環境要素が集約されている。ステーキのジューッと焼ける音、また美しい盛り付けは、それだけで料理をおいしく感じさせる。図1においしさの構成要素を示すが、私たちは、味覚だけでなく様々な要素を総合しておいしさを味わっている。

図1 おいしさの構成要素


食品の味には、「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」の5つの基本味があり、これを五味と呼ぶ。味覚に関する近代的な研究が始まるまでは、「甘味、塩味、酸味、渋味」が4つの基本の味とされてきたが、5番目の味である「うま味」は、味の素株式会社の創業に関わる池田菊苗博士により発見されたもので、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸、グアニル酸などの、昆布、鰹節、しいたけなどのうま味成分である。うま味は日本人にはなじみ深い味であるが、日本特有の味ではなく、肉や野菜にも多く含まれ、世界的にも普遍的なものである。

(1)味の生理作用

五味には、それぞれ生理的な意味がある。糖は甘味を呈する代表的物質であり、同時に生体のエネルギー源である。また、たんぱく質の構成要素であるアミノ酸は、甘味やうま味を呈するものが多い。このように、私たちの身体に必要な物質は、私たちにとって快い味を呈する。同様に、塩も身体には欠かせないもので、適度な塩味は、おいしく食欲をそそる。このようにみると、味は必要な栄養をとらせるためのシグナルともいえる。(しかし、摂り過ぎると身体によくないことを引き起こすのが生活習慣病。古代、人間は、常に食料不足の状態にあり、私たちの身体は、栄養の多いものを積極的に摂るようにできてきた。)

一方、酸味や苦味についてはどうだろう。酸っぱい味は、腐敗したものや未熟な果実に多く含まれ、毒は苦いと言われる。酸味や苦味は、体のためには好ましくないもので、それを避けるためのシグナルであるともいえる。しかし、酸味、苦味が、すべて身体にとって悪いものではなく、酸っぱいものでも、苦いものでも、身体に悪くないものがあり、しかもおいしいという、長い間の経験と学習により、私たちは、酸味や苦味を楽しむようになった。子どもの時には、酸味、苦味は好まないが、大人になって、それが美味しいと感じるようになることからも理解できる。

(2)味を感じる仕組み

私たちは、舌で味を感じるが、どのように感じるのだろうか。舌をよく見ると、ぽつぽつとした乳頭があるが、この中には味蕾(みらい)という器官があり、味を感じ取っている。この味蕾にある味細胞が、センサーとしての役割を果たし、食品中の味を呈する成分と反応し、これらの刺激を脳に伝えることで、私たちは味を感じることとなる。味を伝えられた脳には、香りや食感、見た目など、味覚以外の神経から入ってきた様々な刺激を統合して、おいしさを決定づける。


五味の他に、辛味、渋味は、馴染みある味であるが、五味と違って、味覚神経を通過せずに感じる味と言われている。唐辛子の辛味が料理の風味を増し、食欲を亢進すること、渋味が味に深みをつけ、おいしさへの貢献度は、経験上よく知るところである。

代表的な辛味を呈する食品として、唐辛子、こしょう、山椒、生姜、辛子や、わさび、大根などが挙げられるが、いずれも味わいを深めるものである。渋柿の渋みは、思わず顔をしかめるが、緑茶などに含まれる渋みは味に深みを増す。いずれの味も、食文化が成り立つ過程で、食生活に取り入れられてきた味であろう。


◆コラム「脂肪は、なぜおいしい」

 脂肪には味がないが、食味は非常に良い。マグロのとろ、霜降り肉、クリームなど、ダイエット中の身には、避けるべき食品と言われているのに、避けて通りにくいおいしいものばかりである。その理由として、脂肪には食品の構造を滑らかにする働きがあること、また脂肪に含まれる香りのよい揮発性物質が含まれていることが挙げられる。最近の研究では、脂肪を摂取することで、脳内に「エンドルフィン」という、快楽を感じさせる物質が分泌されるとの報告がある。そのため「止められない、止まらない」であると。脂肪がおいしい訳は、私たちの脳にあったという訳である。