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HOME MEAL MEISTER 03調理と衛生


36-微生物性食中毒(1)

(1)細菌性食中毒(感染型)
①サルモネラ属菌

卵の消費期限の導入や衛生的な取り扱いの普及などで、サルモネラ属菌による食中毒は減少傾向にある。幼児や高齢者は感受性が高く、特に注意が必要である。

菌の特徴 サルモネラ菌は鶏、豚、牛などの多くの動物の腸管内に存在しているが、保菌しているだけで発症していない。河川や下水など自然界に広く分布しており、2500種類以上の血清型が知られている。
感染経路 汚染された鶏肉や鶏卵による食中毒が多発している。十分な加熱工程のない料理が原因となりやすい。
原因食品 鶏卵や生肉、食肉調理品、うなぎやスッポンなど。
症状 水様性下痢、発熱(38~40℃)。嘔吐、頭痛、脱力感、倦怠感を起こす人もいる。
潜伏期間 約5~72時間

◆予防のポイント

    1. 二次汚染防止のため、鶏卵や食肉などを取り扱った手指や調理器具はその都度洗浄消毒する。
    2. 生食用の鶏卵は10℃以下で保存する。
    3. 卵は新鮮なものを購入する。卵を生食する際は表示されている消費期限内に消費する。
    4. 購入後の卵は冷蔵保管し、卵の割り置きはしない。
    5. ハンバーグなどの加熱加工食品は中心部の温度が75℃、1分間以上加熱する。
    6. 調理の際は食品の中心部まで火が通るように加熱する。
②腸管出血性大腸菌(O157、O111、O26など)
菌の特徴 毒性の強いベロ毒素を産生する。牛などの家畜は無症状で保菌している場合がある。
感染経路 食肉の生食が原因となる場合が多いが、加熱不足や調理中の二次汚染が問題となる。
原因食品 家畜や家禽の生肉、焼き肉、しゃぶしゃぶ、ステーキ、メンチカツ、レバ刺し、焼き鳥、野菜サラダなど。
症状 激しい腹痛が起こり、下痢を繰り返し、真っ赤な鮮血便が出るようになる。ひどくなると尿毒症になり、強い痙攣や意識障害を引き起こすこともある。
潜伏期間 1~14日(平均2~4日)

◆予防のポイント

    1. 食肉は中心部まで十分加熱する(75℃、1分間以上)。生野菜などはよく洗う。
    2. 冷蔵庫内の温度は10℃以下に保持し、早めに食べる。
    3. 加熱調理済の食品が二次汚染を受けないよう、一度肉類に触れたときには手を十分に洗い、調理器具は十分に洗浄後、熱湯などで消毒する。
    4. 肉は食中毒菌に汚染されているとして扱うと良い。
③腸炎ビブリオ
菌の特徴 海水中に生息し、約3%の塩分でよく増殖する(真水では増殖しない)。熱に弱く、75.℃・1分間以上の加熱で死滅する。冬は海水や海の泥に潜み、春に海水温が19℃以上になると活動が活発になり増殖する。増殖速度はと非常に早く、10分間で1個が2個になる。
感染経路 魚介類に付着して、漁獲後の流通過程や調理中の不適切な取扱いにより増殖し、食中毒を起こす。また、まな板や調理器具を介した二次汚染がある。
原因食品 魚介類
症状 激しい腹痛、下痢。吐き気や嘔吐を起こす場合もある。
潜伏期間 約10時間~24時間(短い場合で2~3時間)

◆予防のポイント

    1. 魚介類は、調理の前に真水(水道水)でよく洗い、菌を洗い流す。
    2. 魚介類に使った調理器具類はよく洗浄・消毒して二次汚染を防止する。
    3. まな板や布巾は、魚介類専用のものを使う。
    4. わずかな時間でも冷蔵庫(4℃以下)に保存する。
    5. 加熱調理する場合は、中心部まで十分加熱(75℃、1分間以上)する。
④カンピロバクター
菌の特徴 鶏や牛の腸などに常在する菌で、食品中では増殖しない。酸素が3~15%程度含まれる微好気的条件でよく発育し、常温の空気中(酸素濃度約20%)では死滅する。また、500個程度の少量の菌数でも発症する。30℃以下では増殖できず、凍結・解凍で菌数が減る。
感染経路 動物の糞に汚染された肉や水を介して食中毒を引き起こす。生の鶏肉や牛肉が汚染源となることが多く、肉の生食や加熱不足などによって発症する。
原因食品 生あるいは加熱不足の鶏肉(鶏刺し、タタキ、バーベキュー、鶏鍋、焼き鳥など)。鶏肉から調理過程で二次汚染された食品など。
症状 下痢症状が現れ、水様便となる。腹痛及び発熱で、他に倦怠感、頭痛、めまい、筋肉痛などが起こることもある。初期症状は風邪と間違われることもあり、予後は比較的良好である。
潜伏期間 1~7日(平均2~3日)と比較的長い

◆予防のポイント

    1. 鶏肉や畜肉の生食は避ける。熱や乾燥に弱いので、調理器具は使用後によく洗浄し、熱湯消毒をした後、よく乾燥させる。
    2. 鶏肉を扱った後では、手指を良く洗ってから他の食材に触る。
    3. 食肉などは中心部まで十分加熱(75℃、1分間以上)をする。
    4. 未殺菌の井戸水、沢水などは、塩素又は沸騰などにより殺菌してから利用する。