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HOME MEAL MEISTER 03調理と衛生


38-自然毒と化学性食中毒

(1)動物性食中毒

全ての食中毒の中で死亡者が多いのは動物性食中毒である。その中でも最も多いのがフグ中毒である。

①フグ

フグによる食中毒の発生状況は2000~2017年で毎年発生している。件数は14~44件、患者数は18~61名である。死亡者は2001~2008年までは毎年のように1~6名が死亡していたが、2009年以降は3年に1名程度と少なくなった。

フグ毒による食中毒は70~80%が家庭で発生している。その原因は自分で釣ったフグを家庭で調理したものである。フグの種類としてはクサフグ、マフグ、ヒガンフグ、トラフグなどによる中毒が多い。フグの種類に関係なく調理師免許を持っている人、あるいは講習などを受講して、フグに熟知している人の調理したものを安心して食べるのが良い。

②巻貝

エゾボラモドキ、ヒメエゾボラなどの巻貝による食中毒が毎年のように発生している。中毒症状は食後30分~1時間で発症し、激しい頭痛、めまい、船酔い感、酩酊感などである。この中毒の特徴はこれら巻貝の唾液腺にあるテトラミンによるものであり、唾液腺を除去すれば特に問題はない。発症場所の大半は自分で採取し家庭で食べたことによる。これら巻貝を採取した時には、漁業関係者等良く知っている人に食べ方を聞くと良い。

③その他の魚類

熱帯、亜熱帯に生息する魚のうちアオブダイ(毒成分パリトキシン)の他、シガテラ毒を持つパラフエダイ、イシガキダイ、毒カマス等、熱帯や亜熱帯に生息する魚は有毒魚として食用を禁止されているものが多い。シガテラによる症状は消化器系症状と神経系症状であるが、回復が非常に遅いという特徴がある。この中毒発生原因は釣り人が釣った魚を家庭に持ち帰り、調理して食べて食中毒になった例が圧倒的に多い。確信が持てない魚を釣った時には漁業関係者に見てもらう必要がある。

(2)植物性自然毒

植物で有毒物質を持っているものは多い。特に身近な例としてキノコやジャガイモ、水仙によるものがある。

図

①キノコ

毎年、秋になるとキノコによる中毒が多発する。栽培されたキノコと違い野生のキノコは環境により姿、形が大きく違うことが多く、素人は誤認しやすい。毎年100人以上はキノコによる中毒患者が出ている。

キノコの種類は多く、原因不明の場合が多いが、判明している中でツキヨタケによるものが多く、次いでクサウラベニタケ、カキシメジを加えると半数以上を占める。キノコを採取した時に、確信を持てるもの以外は食べないことが重要である。

図

②ジャガイモ

ジャガイモによる食中毒が毎年のように繰り返されている。そのほとんどが学校である。食育として学校で栽培し、収穫したものを食べたことによるものである。一般にジャガイモの芽の部分は毒があるということを知っている人は多いが、栽培して長期間保存して発芽したジャガイモを食べることは考えにくいため、発芽したものではなく緑化したものを食べたことによると推察できる。畑でジャガイモが土から顔を出し、直射日光に当たるとその部分が光合成を起こし緑化する。あるいは収穫後、直射日光下で保存すると同じ現象が起こる。緑化した部分は芽の部分と同様に毒性を持つソラニンが生成されている。緑化したジャガイモを食べなければ中毒は回避できる。

③その他

水仙の球根をノビルと誤認し、あるいは葉をニラと誤認して食べたために悪心、嘔吐、下痢などの食中毒症状を呈する例が毎年のように発生している。

その他チョウセンアサガオ、バイケイソウ、ニリン草などによる中毒も例数は少ないものの毎年のように発生している。いずれも家庭で発生しているが、良く観察すれば防げる事故であり、採取した食材は、良く観察して見慣れないものは避ける必要がある。


(1)ヒスタミン

カジキマグロ、サバなどいわゆる赤身の魚(青魚)は必須アミノ酸のヒスチジンを多く含んでいる。捕獲後の温度管理が悪くモルガン菌などが付くと、ヒスチジンから合成ヒスタミンが生成されるため、口の周りや耳たぶが紅潮したり、蕁麻疹(じんましん)となる食中毒症状が出る。対策は捕獲後の魚の温度管理であるが、微生物性の食中毒の対策とほぼ同様である。