HOME MEAL MEISTER 04健康と栄養
46-生活習慣病、及び高齢者の食事
1.生活習慣病の食事
(1)肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧の食事
①適正なエネルギーの摂取(表1)
エネルギーが適正かどうかは、体重と体脂肪の変化で判断する。1週間に体重が1kg以上減少するか、体脂肪が減少せず、除脂肪体重*1が減少するようであれば、エネルギー不足であるため摂取エネルギー量を増やす。また、1週間に体重減少が0.5kg未満であれば、摂取エネルギー量が多いか運動不足であり、生活活動を見直す。
②充分な良質たんぱく質の摂取
体たんぱく質は、常に合成と分解が行われている。エネルギー制限をしている状態では、体たんぱく質の分解が優位になりやすい。体たんぱく質合成を促すためには、充分な良質たんぱく質*2の摂取が必要である。卵50g、乳・乳製品250g、肉・魚介100~140g、豆・豆製品80gが目安である。
③適正な炭水化物の摂取
炭水化物の摂取不足は、体脂肪燃焼の抑制や体たんぱく質分解を促進するため、良い減量結果が得られない。一方、砂糖の主成分であるショ糖や果物に含まれる果糖の過剰摂取は、血糖値や血中中性脂肪値の上昇を招く。
④適正な脂質の摂取
脂質は、脂溶性ビタミン*3の吸収促進や、必須脂肪酸*4の供給、腹持ちを良くする等の利点があるので、減量中も大匙1~2杯を目安に脂質を摂取する。また、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)*5やIPA(イコサペンタエン酸、EPAとも呼ばれる)*6は、血中中性脂肪値や血中コレステロール値の上昇を抑制する。
⑤塩分の摂取を控え、充分なカリウムの摂取(表2)
動脈硬化の合併を予防するため、高血圧だけでなく、他の生活習慣病も塩分を控える必要がある。醤油、味噌、漬物、干物だけでなく、水産練り製品や農畜産加工品、寿司にも塩分が多く含まれている。野菜、果物、芋に含まれるカリウムは、過剰に摂取した塩分を体外に排泄して血圧を下げる作用がある。芋100g、果物200gが目安である。
⑥充分な食物繊維の摂取
食物繊維は、咀嚼回数の増加や、消化液を含んで膨らむ性質があり、食事量を抑える作用がある。また、糖やコレステロールを吸着して吸収を阻害するため、血糖値や血中コレステロール値の上昇を抑制する作用があり、過剰に摂取した塩分を体外に排泄して血圧を下げる作用もある。1日に野菜350g以上(緑黄色野菜1/3、淡色野菜2/3)、さらに30~40gのきのこ・海藻の摂取が目安である。
⑦アルコールは控える
⑧1日3食を均等に、ほぼ同じ時刻に食べる
朝食欠食者に栄養バランスの悪い者が多く、生活習慣病患者が多い。また、毎食、均等に食べることで、食後の血糖上昇を抑制し血糖コントロールを是正する。
表1 目標エネルギー量の算定式
身体活動 | 算定式 |
デスクワークが多い場合 | 標準体重×25~30kcal |
立ち仕事が多い場合 | 標準体重×30~35kcal |
力仕事が多い場合 | 標準体重×35~kcal |
標準体重=身長(m)2×22
表2 減塩の工夫
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(2)骨粗鬆症の食事
①充分な良質たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取
良質たんぱく質、カルシウム、ビタミンKは骨の形成に欠かせない。カルシウムは、乳・乳製品、小魚、小松菜に含まれるが、吸収率が良いのは乳・乳製品である。ビタミンKは、納豆や緑黄色野菜に含まれる。魚に含まれるビタミンDは、カルシウムの吸収を促進する。
②リンの摂取を控える
リンはほとんどの食品に含まれ、加工食品には食品添加物として含まれている。リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害するため、加工食品を控える。
*1 除脂肪体重
体重から体脂肪量を差し引いた体重で、骨、筋肉、水分を含む。
*2 良質なたんぱく質
体内で合成できず、食品から摂取しなければならない必須アミノ酸を充分にバランス良く含むたんぱく質で、卵、乳・乳製品、肉、魚、大豆・大豆製品が該当する。
*3 脂溶性ビタミン
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが該当する。
*4 必須脂肪酸
体内で合成できないか、合成できたとしても合成速度が遅く、必要量を満たすことができないため食品から摂取しなければならない脂肪酸。リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が該当する。
*5 DHA(ドコサヘキサエン酸)
多価不飽和脂肪酸の1つで、青魚に含まれ、生理作用として血中コレステロール値の上昇抑制のほか、学習能力、認知機能の向上がある。
*6 IPA(イコサペンタエン酸、慣用名EPA)
多価不飽和脂肪酸の1つで、青魚に含まれ、生理作用として血中中性脂肪値の上昇抑制のほか、血栓の形成を抑制し、抗動脈硬化作用がある。
2.高齢者の食事(表3、表4)
加齢により、食欲の低下、消化液の減少、味蕾(みらい)細胞の萎縮(いしゅく)を伴う味覚異常(特に塩味、甘味を感じなくなる)、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)機能低下、口渇感の低下、大腸の運動機能の低下が生じ、低栄養、脱水、誤嚥(ごえん)*7、誤嚥性肺炎*8、便秘、食べる楽しみの喪失など多くの問題を引き起こすため、食事管理は重要である。
①摂食・嚥下機能に配慮した食材や調理の工夫(表2、表3)
②味のめりはりをつける
味覚異常により濃い味付けを好むようになり、血圧の上昇を懸念して塩分を減らしすぎてかえって食欲の低下を招く。1食の中で1品は濃い味付けにし、他の料理は薄味にして味のめりはりをつけることで食欲の低下も防ぐ。
③水分補給
口渇中枢の低下により脱水を招くため、心臓、腎臓の機能に問題がなければ、積極的な水分補給が必要である。
④口腔ケア
食事の前後に口腔の清掃を行うことで「誤嚥性肺炎」等の感染症を予防する。
表3 嚥下食に適さない食材の特徴
特 徴 | 食 材 |
加熱しても柔らかくならないもの | 蒲鉾、こんにゃく、いか、きのこ |
硬いもの | ナッツ、ごま、炒り大豆 |
厚みのないもの | 焼きのり、わかめ |
パサパサしたもの | パン、ふかし芋、ゆで卵、焼魚 |
繊維の多いもの | 青菜類、ごぼう、れんこん |
酸っぱいもの | 酢の物 |
液状のもの | 水、お茶、汁物 |
バラバラまとまりにくいもの | 刻み食、ふりかけ |
表4 摂食・嚥下機能に配慮した調理の工夫
調理の工夫 | 料 理 |
加熱調理 | 煮物 |
適度な水分 | フレンチトースト、オムレツ |
つなぎを利用 | 肉団子、ハンバーグ、白和え、 |
切り方 | 隠し包丁、細かく刻まず一口大 |
油脂の利用 | ポテトサラダ、スイートポテト |
とろみの利用 | ポタージュ、あんかけ、シチュー |
*7 誤嚥(ごえん)
胃液や食物などが誤って気管や気管支内に入ること。
*8 誤嚥性肺炎
誤嚥により、細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎のこと。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係していると言われている。