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57-保存の技術 温度制御(2)冷凍
1.食品素材の冷凍
食品素材を凍結貯蔵すると、食品中の微生物の発育や酵素反応、化学反応が著しく低下するために、栄養や風味を損なうことなく冷蔵よりもはるかに長期間の保存が可能になる。一般の冷凍食品にはー20℃近辺が、冷凍マグロや冷凍濃縮果汁などの保管にはー40~ー30℃が利用されている。
ー18℃~氷結点の温度域では、食品中の全ての水分が凍結しているわけではなく、未凍結の水がかなり残っている。この温度帯を利用したものとして、例えばフリーズフロー食品(ー15~ー10℃)がある。これは砂糖、食塩などの溶質の特性を利用して自由水を少なくし、水分活性を低く抑えた食品で、冷凍ホイップクリーム、ケーキ、デザート類などがある。
パーシャルフリージング(ー3℃前後)は、部分的な凍結を利用したもので、この技術は生鮮魚の鮮度「活きのよさ」を残すことかできる。 これらの温度域は、冷蔵品よりは貯蔵性に優れているものの、ー18℃以下で貯蔵されている冷凍品と比較すると、物性や化学的に悪影響を受けやすいので注意が必要である。
2.前処理
冷凍素材の前処理は、原料から不可食部を除去し、可食部のみを適当な大きさや重量に揃え、必要に応じて加熱処理などを行う。この前処理は、解凍後の品質に重要な役割を果たしている。野菜を凍結すると、水分の膨張により細胞壁が破壊され、解凍した際にドリップが生じるとともに、細胞内の酵素が働いて酸化、褐変、栄養素の減少など、多くの変化を生じる。
このような品質劣化を防止するために、前処理としてブランチングと呼ばれる操作が行われる。ブランチングとは、野菜を凍結する前に加熱処理を行うことで 加熱条件は野菜の種類によって異なる。例えば、アスパラガスなどは熱湯中に2~4分浸す。ブランチングには、細胞内の各種酵素を失活させるとともに、野菜の組織を柔軟にし、灰汁成分の除去、殺菌・洗浄を行うなどの効果がある。この処理により野菜の鮮度が保持され、長期間の冷凍保存が可能になる。
冷凍果実は、前処理として酸化防止のためにアスコルビン酸添加などが行われる。冷凍果汁では、オレンジやブドウ、リンゴなどが冷凍濃縮果汁に加工されているが、原料果実を搾汁、脱気して濃縮した後、濃縮過程で失われた香りを補うために、凍結前に未濃縮果汁が加えられている(カットパックと呼ぶ)。
3.凍結過程における品質制御
冷凍素材の品質にとって凍結速度は重要である。水の氷点は0℃であるが、実際はこれよりも数℃低い温度で、過冷却状態となり、氷の結晶が析出し始める。0~ー5℃の温度域を最大氷結晶生成帯といい、多くの食品の氷結点はこの温度帯にある。凍結過程では、素材の品温が、この最大氷結晶生成帯をいかに早く通過して低下するかが重要である。急速凍結では氷結晶の成長が抑えられ、緩慢凍結では細胞外に氷結晶ができ、細胞内の水分を集めて大きく成長する。大きな氷結晶は、貯蔵中に結晶周辺の細胞組織を圧迫し、タンパク質の変性を起こす原因となる。解凍時には、この氷結晶の水分は細胞内に戻らず大量のドリップとなって流出される。ー18℃以下になると、氷結晶の水分子運動は制限され、物理的・化学的変化は起こらなくなり、食品の保存に適した状態となる。ドリップの発生を抑制するには、フリーザーの庫内温度をー30℃以下で急速凍結し、ー25℃以下で貯蔵することが効果的である。
貯蔵中の冷凍素材の変質として「冷凍やけ」がある。冷凍やけは、冷凍素材の表面が、氷結晶の昇華によって乾燥し、タンパク質が変性して硬化し、肉質が酸化褐変する現象である。
食肉の場合、脂質の酸化が進んだものは「油焼け」と呼ばれる。この乾燥を防ぐために、貯蔵する前にグレーズ処理が行われる。グレーズとは、凍結した製品を低温の清水または塩水に短時間くぐらせることで、付着した清水や塩水が瞬時に凍結し、素材の表面に氷の被膜を作り、酸素を遮断して酸化を抑える。凍結貯蔵中の温度変動はできるだけ避け、貯蔵中に表面の氷被膜が薄くなったり無くなったりした場合は、再度グレーズ処理を行うこともある。
4.解凍技術
解凍とは、冷凍品中の氷を融解させて元の素材に戻すことをいう。解凍には急速がよい場合と緩慢がよい場合があり、魚や肉類は低温でゆっくりした解凍が、逆にブランチングした野菜や加熱後凍結したエビ、カニなどは急速解凍が望ましい。実際に行われている解凍方法として、加熱解凍 (調理加熱解凍)、マイクロ波加熱解凍、水中解凍、氷中解凍、電気冷蔵庫中解凍、自然解凍なとがある。
解凍時には、微生物の活動が再開し、特に、解凍物から浸出するドリップは微生物の栄養源となって増殖が進むので、解凍後の製品の取り扱いには注意が必要である。解凍技術は凍結技術と比較してまだ完成されておらず、今後の研究が期待される。