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58-包装・充填の技術
1.食品の包装方法
食品の包装方法は、包装機械や包装材料の開発が進むにつれ、多様化してきている。かつては手で包んでいた食品が機械で包装されるようになり、充填するスピードも上がり、無人化も進む。食品工場などで採用されている主な包装形態として、①容器充填包装、②製袋充填包装、③成形充填包装の3つがある。
(1)容器充填包装
牛乳、酒類、果汁飲料などの液体食品は、あらかじめ成形された金属缶、ガラスびん、紙容器、プラスチック容器に充填した後、密封される。この包装形態は、古典的なものであるが、近年急速に高度化している。例えば、金属缶などで充填速度が1分間に1,000~1,200個のように高速化され、プラスチック容器では、シートを容器に成形しつつ充填密封するという一貫方式も採用されている。
(2)製袋充填包装
製袋充填包装は、キャンディ、スナック食品などの菓子類、粉末食品や乳製品、食肉加工品などの包装に使われている方法である。この方式では、包装材料をつくり、つくられた袋に食品を充填し、その後密封する。密封する方法により、製袋充填シール方式と製袋充填結紮(けっさつ)方式とに分けることができる。
製袋充填シール方式によってつくられる包装袋の形態は、ピロー型、三方シール型、四方シール型と自立型の4種類に分けられる。包装材料には、紙やプラスチック、アルミ箔などのラミネートフィルムが多く使われている。
(3)成形充填包装
医薬品の錠剤のPTP包装、ミルクのポーションパックやスライスハムの深絞り真空包装などは、成形充填包装方式によって包装されている。この成形充填包装は、プラスチックシートを加熱しながら、包装する食品の形状に合わせて成形し、その成形容器に食品を詰めて、ふた材で密封する方式であり、商品の保護性、少量包装なとど特徴がある。食品の種類によって包装材内部を真空にしたり、不活性ガスで置換したりすることかできる。
2.食品の形状別の充填包装
清涼飲料、酒、調味料などの液状食品は、上述の通り、容器充填包装されている。形状も容器のデザイン性が求められるようになり、多種多様である。 液状より粘度の高い粘性食品、たとえば、ジャム、プリン、ヨーグルト、水ようかん、味噌、マヨネーズ、マーガリン、クリーム、餡などの充填方法は、製品や容器によって異なり、製品の粘性が低粘度から高粘性まで多様なため、最適な充填機を選択する必要がある。
スライスハムなどの固形食品には、その形状の保護、商品性の維持のため、成形充填包装を利用することが多い。食肉製品は、真空包装の後、保存のため湯殺菌されているものが多い。魚肉ソーセージは、バリア性が高い包装材料・アルミ金具で結束した後、レトルト殺菌されている。カニ風味かまぼこなどは、連続深絞り真空・ガス置換包装機で包装されている。(真空包装、ガス置換包装、バリア性については☞2章ー59参照)
3.無菌充填包装
包装食品の安全性や品質の向上に配慮し、シェルフライフ(賞味期間)の延長を可能にした無菌充填包装システムが開発され、実用化されている。無菌充填包装とは、あらかじめ殺菌した食品を無菌環境下で無菌の包装材料を用いて無菌的に充填包装したものである(☞2章ー60参照)。
身近なところでは、ロングライフ牛乳、コーヒー用フレッシュ、乳酸飲料、果汁飲料、醤油、酒などがあり、これらは常温でも封を開けなければ、シェルフライフは数ヶ月以上にも及ぶ。近年では、プリン、ヨーグルト、業務用トマトペースト、濃縮果汁ペーストなど粘性の高い食品、さらにはカレーやシチューなど固形分を含む粘性食品の無菌充填包装システムが開発されて使用されている。
茶飲料は、PETボトルに無菌充填されているものが多い。緑茶、ウーロン茶のようにタンニン含量が高く砂糖などの糖質を含まないものは、殺菌条件が穏やかな準無菌充填包装システムが、糖質を含むミルク入りの紅茶などは滅菌処理を行った完全無菌充填包装システムが採用されている。
また、金属缶入りコーヒーは、一般的には充填密封後、120℃、20分以上で殺菌されているが、 このようなレトルト処理はコーヒーの香りに影響を与えるので、無糖の製品では無菌充填包装したものも増えている。
4.商品性の向上に配慮した充填包装食品
調製時は液状で包装容器に充填し、凝固させて製品になる包装食品の事例に充填豆腐がある。充填豆腐とは、衛生面や輸送中に壊れやすいという豆腐の問題点を改良し、かつ大量製造にも向くように、プラスチック容器の中で固めた絹ごし豆腐である。
充填豆腐の調製法は、絹ごし豆腐と同様な濃度の豆乳を作り、一旦20~30℃に冷やす。この豆乳とグルコノデルタラクトンなどの凝固剤とを混合しながら素早く容器や袋に充填し、容器に蓋を加熱溶着したりアルミ金具で結束する。その後、この容器・袋をそのまま 90℃の湯の中で約40分入れて凝固させることにより充填豆腐ができる。同様な商品として、カップ入りプリン、カップ茶碗蒸しなどがある。