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60-無菌包装

「無菌包装(Aseptic Packaging)」は「無菌充填包装」とも呼ばれるが、その基本的な考え方は、UHT(超高温)滅菌などにより無菌にした食品を無菌の包装容器に無菌環境下で充填・包装するシステム(図1)のことで、これにより常温で長期間の流通が可能となる。缶詰や瓶詰、レトルト食品なども、内容物は無菌状態で長期間の常温流通が可能である点は同じであるが、無菌包装は包装後に殺菌処理をしない点に大きな違いがある。

無菌包装技術は、缶詰の高温高圧長時間の加熱による食品の品質劣化を改良する目的で、戦前から開発が進められてきたが、1950年代以降各種のプラスチックが開発され、紙やアルミとの複合材料の開発や成型技術の開発が進むとともに、微生物の制御技術が格段に進歩したことによって実用化された。

具体的には、1960年代にスウェーデンのテトラパック社により「ロングライフ(LL)牛乳」が販売され、1970年代には包装材料の滅菌、成形、充填、密封一体型の無菌充填包装システムや業務用の無菌バックインボックス包装などが開発された。1980年代に入り、米国でFDAが包装材料の滅菌手段として過酸化水素の使用を許可したことを契機に、技術開発が先行していた欧州メーカーと技術提携して無菌包装システムが急速に普及した。わが国では、1985年に厚生省によりLL牛乳の常温流通が認可された。その後、食品の滅菌技術が進展するとともに、固形物入り高粘性食品などの無菌包装食品も実用化され普及している。

図1 無菌充填包装システムの概略


無菌包装された食品は商業的無菌状態であり、常温での流通が可能である。商業的無菌とは、食中毒菌や病原菌が存在せず、常温流通下において腐敗や経済的損失をもたらさないような微生物が存在しないことを意味する。缶詰やレトルト食品のように包装後の殺菌を行わないので、耐熱性のないプラスチック包装材やバックインザボックスなどや大型容器の利用が可能である。

食品の殺菌がUHT滅菌などにより短時間で行われることから、加熱時間が長くなることが多い缶詰やレトルト食品と比較すると、風味を損なわないで良質の製品が得られる。無菌包装には以下のような利点と欠点がある。また、図2に無菌包装米飯とレトルト米飯の工程の違いを示す。

利点
  • (1)滅菌時間が短いため、缶詰などと比較して風味、色調がより自然に近く、ビタミンなど栄養成分の損失も少ない。
  • (2)高温滅菌によって、褐変など品質劣化が著しい高粘度食品の包装が可能となる。
  • (3)食品を包装前に滅菌するので、ドラム缶など業務用大型容器の使用が可能となる。
  • (4)異なった成分をそれぞれ滅菌後に混合することにより、多様な内容物の包装が可能となる。
  • (5)大量連続生産、作業の自動化により、生産ラインの合理化ができる。
  • (6)流通のエネルギーコストが削減できる。
欠点 (1)少量多品種生産に向かない。

図2 無菌包装米飯とレトルト米飯の製造工程の違い(出典:(一社)包装米飯協会)

 


「無菌化包装(Semi-aseptic Packaging)食品」は「無菌包装食品」と同様に、あらかじめ殺菌した食品を、無菌ないしそれに近い包材を用いて無菌の雰囲気で包装するが、包装された食品の微生物レベルは商業的無菌の段階に達していない。したがって、常温流通は困難で、低温保存などの保存技術と組み合わせて流通される。低温流通で数週間から数ヶ月の賞味期間が得られる。

無菌化包装食品は無菌包装食品と比較して、食品の殺菌条件が穏やかな場合が多いため、異臭の発生や褐変化などの品質劣化が少なく、素材の天然風味を大切にしたい食品などに適している。


表1に無菌包装食品と無菌化包装食品の事例を示す。

表1 無菌包装食品と無菌化包装食品の事例

食品の事例
無菌包装食品
  • (乳製品)LL牛乳、乳酸飲料、コーヒー用フレッシュ、プリン
  • (果汁飲料)各種果実ジュース、トマトジュース、果汁ネクター
  • (調味料・酒)醤油、ケチャップ、濃縮スープ、酒類、ワイン
  • (その他)茶飲料、水、豆乳、充填豆腐、米飯
無菌化包装食品 米飯、もち、カニ風味かまぼこ、スライスハム、スライスチーズ、惣菜類

<参考HP>