HOME MEAL MEISTER 05加工食品
61-缶詰
1.缶詰技術の歴史
缶詰の原型である「びん詰め」の誕生はナポレオンの時代に遡る。軍隊のために食料を長期保存する技術を公募したところ、これに応えたのがニコラ・アペールである。彼は、食品をびんに入れ加 熱してから封をすれば食品が長期に保存できると提唱した。当時、食品が腐敗するのは空気によるものとされており、加熱により空気を追い出せば腐敗が防げると考えた。食品が腐敗する原因が細菌によることを、パスツールが発見する以前のことである。後から考えれば加熱が空気を追い出すだけでなく、加熱殺菌をしていたのである。
その後、19世紀に英国で、現在のようなブリキ缶缶詰の技術が発明され、アメリカに渡って豊富な農産物の加工する缶詰産業が花開く。日本では、明治の初めにいわしの油漬け缶詰をつくったことを始まりとして、さけ、かに、まぐろなどの水産物、みかんやりんごなどの果実など、冷蔵設備などが十分でなかった時代には、旬の農水産物を長期保存する技術として缶詰が重宝されていた。
2.缶詰の種類
缶詰の種類は、その内容により、以下のように分類される。
①水産缶びん詰 | かに、さけ、まぐろ、かつお、いわし、さんま、さば、いか、赤貝、あさり、かきなど。さらに水煮、トマトソース漬、油漬、焼き物、かば焼、野菜煮などの種類がある。 |
②果実缶びん詰 | みかん、もも、パインアップル、洋梨、りんご、さくらんぼ、びわなどを原料に、主に砂糖シロップに漬けたもの |
③野菜缶びん詰 | 竹の子、グリーンピース、アスパラガス、スイートコーン、トマト、木の子など水煮や味付けしたもの |
④ジャム缶びん詰 | いちご、りんご、あんず、いちじく、もも、ぶどう、ベリー類などのジャムや柑橘類のマーマレード |
⑤食肉缶びん詰 | 牛・豚・鳥などの肉を使い、味付け、水煮、ソーセージやコンビーフなど |
⑥調理食缶詰 | カレー、シチュー、パスタソースなど |
⑦ベビーフードびん詰 | 離乳期の乳幼児の食事として、消化吸収しやすく栄養面も考慮したもの |
⑧飲料缶詰 | 果汁や乳固形分の多いミルクコーヒーなど |
⑨その他の缶 | プリン、水ようかんの缶詰、たれ類のびん詰め |
⑩ペットフード缶詰 |
3.製造法
缶詰は、一般には、以下のような工程で製造される。
原料→ 調理→ 詰込→ 注液→ 脱気→ 密封→ 殺菌→ 冷却→ 打検・荷造り→ 製品
また、最近では、缶切りを必要としないプルトップタイプが主流となっている。缶詰は長期保存されるものであるから、その殺菌には注意しなければならない。内容物のpHが低く糖濃度が高い果実缶詰では、82~84℃、11~13分間の条件で低温殺菌される。pH5.5以上、水分活性0.94以上の食品では、「中心温度が120℃以上、時間4分間」と同等以上の加圧加熱殺菌が用いられる。
缶詰の特徴は、缶胴と缶蓋を「二重巻締め」という技術で密封しているところにある。図2に、缶詰の二重巻締め部の構造を示した。この二重巻締めでは、水や細菌が缶の中に侵入するのを防ぎ、現在の工程では、缶の中の空気を抜いて真空状態で巻締めができる「真空巻締機」が主に使われている。
缶詰は、加熱と同時に脱気(中から空気を追い出す)こともでき、これにより、残存酸素による内容物の缶詰は、真空度の低いもの、つめ過ぎのもの、凹んだものなどの不良缶は選び出して出荷しない。この検査には「打検」といって、打検棒で缶を叩きその音で判断をしている。現在では、自動で機械がその音を判断する。今ではそのようなことはないと思うが、缶が膨張しているものは内容物が腐敗している恐れがある。
4.缶詰の情報、容器のリサイクル
缶詰の缶マークは、ふたに内容物や調理方法、製造工場や賞味期限を記した記号が3段に組み合わせて付けられているが、最近では印刷技術の発達により、賞味期限のみを記したものもある。手元にある缶の記号を確認してみよう。