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62-レトルト食品
1.レトルト食品の歴史
レトルト食品は、米国の軍用食として1950年頃から研究が進められ、1969年に月面に到着したアポロ11号に積まれたことで、一般に知られるようになった。フレキシブルな袋(パウチ) に封入して、加圧加熱殺菌したレトルト食品は、常温で長期保存が可能で、缶詰のような重量感がなく、食用後のゴミも軽量であることから、宇宙食のニーズと合致した。
日本でも、月面到着と同じ年に、レトルトカレーが発売されたのが始まりである。当時、袋のまま温めて賞味できることから消費者に受け入れられ、大流行した即席めんとともにインスタント食品の代名詞となった。しかし、その後消費者に飽きられて生産量は伸び悩んだが、大きな具を入れたタイプが開発されて生産量はさらに増加している。今ではさまざまな食品に適用され、100社を超える企業で500種以上のレトルト食品が生産されている。
2.レトルト食品の種類と消費
表1にレトルト食品の種類を示すが、大きく分けると、袋状のもの(パウチ型)とトレー型のものに分けられる。
長期保存できるので、買い置きとして保管されていることも多い。レトルト食品の年間生産量は30万トンで、その中でカレーが最も多く全体の45%を占めている。長期保存ができ、お湯で温めるだけで食べられる利便性とともに、1食ずつの包装であるものが多いので、個食化が進む中、レトルト食品の生産量は伸びている。
表1 レトルト食品の種類
袋詰め食品 (パウチ型) |
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成形型容器詰食品(トレー型) |
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3.レトルト食品の製造方法
レトルト食品の製造方法は、缶詰の製造方法と基本的には同じで、素材または調理した食品をパウチまたはトレーに充填し、レトルト装置にて加圧加熱殺菌する。食品衛生法では、「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」と定義付けられ、食品のpH5.5以上、水分活性0.94以上の食品では、中に入れた食材の中心温度が120℃以上、加熱時間が4分間、またはこれと同等以上の加熱が施されなければいけない。レトルト食品は長期保存するものであるので、その製造にあたっては、食品衛生法で細かい製造基準が定められている。また、製造後のレトルト食品では、完全に殺菌されているかどうか、製品を35.0℃で14日間保持し、膨張や漏れがないことを確認する「恒温試験」により確認する必要がある。
用いるパウチ(積層フィルム)には、アルミ箔などの金属箔入りタイプと透明タイプがある(表2)。金属箔入りタイプのパウチの形状は一般に平袋であるが、ディスプレー性を良くするために、スタンドタイプ(底部に’マチ‘をもたせて自立するもの)もある。透明タイプのパウチは内容物が見えるという点で商品価値があるが、金属箔を使用していないため光と酸素を透過し、商品寿命が短いとう欠点がある。トレー型のレトルト食品にも、パウチ型と同様のフィルムが使用される。
表2 レトルト食品に用いられる積層フィルムの素材の組成例
不透明タイプ | NY/PET/CPP |
透明タイプ |
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NY: ナイロン PET: ポリエチレンテレフタレート CPP: 未延伸プロピレン
PDPC: ポリ塩化ビニリデン Al: アルミ箔 HDPE: 高密度ポリエチレン