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75-アレルゲン表示
1.アレルゲン表示の必要性
食物アレルギーの治療は、正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去(除去食)が基本となる。そのため、特に加工食品においては、その食品中のアレルギー物質に関する正確な情報が必要となる。食物アレルギーの健康被害を防止するため、日本では2003年に食品衛生法の中でアレルギー物質(アレルゲン)の表示制度が始まり、現在では食品表示基準で表示方法が決められ、アレルゲンに関する情報を提示することになっている。(食物アレルギーについては☞4章-43参照)
2.特定原材料等*1の種類
食物アレルギーの発症頻度が高い、または重篤な症状を起こしやすい食物を「特定原材料」といい、「卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生」の7品目について表示が義務付けられている。また、あわびを始めとした20品目は、「特定原材料に準ずるもの」といい、表示が推奨されている(表1)。表示の対象となるのは容器包装に入れられた加工食品のみで、店頭で計り売りされる惣菜や外食は対象外となる。しかし、原因食物の使用の有無は「除去食」を実践する上で重要な情報であることから、適切な情報提供が求められている。
<特定原材料等の代替表記と拡大表記>
商品によっては表示スペースが限られており、詳細な表示を行うことが困難な場合がある。
そこで、「特定原材料等」を連想することのできる一般的・常識的な記載方法を特定原材料等の「代替表記」として認めている。例えば、特定原材料の「卵」の代替表記として、「玉子」「タマゴ」「エッグ」等がある。この代替表記は「特定原材料等の代替表記方法リスト」としてリスト化されている。
そのほか、特定原材料名や代替表記を含んでいて、これらを用いた食品であると理解できる記載方法を特定原材料等の「拡大表記」として認めている。例えば、特定原材料の「卵」の代替表記として、「厚焼玉子」「ハムエッグ」等がある。
表1 特定原材料等
必ず表示される7品目(特定原材料) | 卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生 |
表示が推奨されている20品目(特定原材料に準ずるもの) | あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、カシューナッツ、ゴマ |
*1 特定原材料等
「特定原材料」7品目と「特定原材料に準ずるもの」20品目を合わせて「特定原材料等」という。
3.アレルゲン表示の方法
アレルゲン表示には次の2通りの記載方法があるが、「個別表示が原則」であり、「例外的に一括表示が可能」とされている。この「例外的」とは、表示面積に限りがあって表示が困難な場合等に一括表示でも可能ということである。
<2つのアレルゲン表示方法とその特徴>
- ① 個別表示(原則)……個々の原材料の直後にそれぞれに含まれるアレルギー物質を表示する。どの原材料にアレルギー物質が含まれるか分かりやすい。
- ② 一括表示(例外)……全ての原材料、添加物を記載し、最後にアレルゲンをまとめて表示する。
(1)個別表示(原則)
1つ1つの原材料の後に「(○○、△△を含む)」と、特定原材料等を記載する。ただし、1度記載した食品が別の原材料にも含まれている場合、2度目以降の記載が省略されることもある。
◆個別表示の例
原材料名 | 小麦粉、コーン、マヨネーズ(卵を含む)、マーガリン、砂糖、脱脂粉乳、食塩、パン酵母 |
添加物 | 酸化防止剤(V.E)、香料、乳化剤(大豆由来)、イーストフード、V.C |
(2)一括表記(例外で、要件を満たした場合に可能)
個別表示が困難な場合や個別表示がなじまない場合は、すべての原材料の後に「(一部に○○、△△を含む)」のように、特定原材料等をまとめて記載する。つまり一括表記では、特定原材料等がどの原材料に含まれているのかは示されない。
◆一括表示の例
原材料名 | 小麦粉、コーン、マヨネーズ、マーガリン、砂糖、脱脂粉乳、食塩、パン酵母(一部に卵・小麦・乳成分を含む) |
添加物 | 酸化防止剤(V.E)、香料、乳化剤、イーストフード、V.C、(一部に大豆を含む) |
<一括表記の新基準(食品表示基準)と旧基準での表記の違い>
新基準においては、特定原材料等そのもの(卵、小麦等)が原材料名欄に表示されている場合や、代替表記等で表示されているものも含め、一括表示にはその食品に含まれる全ての特定原材料等を表示することになった。つまり、旧基準において原材料名欄で表示された特定原材料等は省略可能であったが、新基準では一括表示での省略はできなくなった。 また、旧基準における原材料名の最後に「(原材料の一部に○○・・・を含む)」という表示方法がとられていたが、新基準では、「(一部に○○・・・を含む)」と変更された。
4.コンタミネーション(意図せざる混入)への対応
加工食品の原材料として特定原材料等を使用していなくても、特定原材料等を使用した加工食品と同じ製造ラインを使用したために、特定原材料等が混入してしまう可能性がある。このような意図せざる混入を「コンタミネーション」という。コンタミネーションによって混入した特定原材料等については表示の義務はないが、食物アレルギーはごく微量の原因物質によっても引き起こされることがあるため、必要に応じて消費者に情報提供することが望ましい。そのため、これらは製造業者によって自主的に「本品製造工場では、○○を含む製品を製造しています」のように表示されている。
ただし、安易な表示により消費者の選択の幅を狭めてしまうことを防止するため、特定原材料等が「入っているかもしれません」「入っているおそれがあります」などの「可能性表示」は禁止されている。