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HOME MEAL MEISTER 07食の文化と環境


82-食文化、食のマナー

気候・風土に育まれた食料を得て、調理し、それを共に食べることの営みの積み重ねが食文化を形成する。気候や風土、地理的な条件だけでなく、宗教、民族、習慣、また交易などの社会的なさまざまな要因の影響を受け、食文化が形成される。国内だけをみても、全国あらゆるところに土地独特の食文化が形成されている。しかしながら、交通機関の発達やグローバル化で、食の均一化も起こっている。

変わるものと変わらないものがあるが、食のマナーは、人間が共に食べることを潤滑に行うものという意義は変わらないはずである。個食化が進み「共に食べる」機会が減っている今、改めて食のマナーについて考えたい。


マナーの神髄はその「こころ」にある。「共に食べる」ことを潤滑に行うためには、自分自身、共に食べている人、あるいは食材や食事を作ってくれた人への配慮が必要となる。よって、食事のマナーは、ハレの日や外食の時だけでなく、日常の日々の食事にも存在している。世界中にさまざまな食文化があり、食事の作法もそれぞれであるが、「人への配慮」ということを基本とすれば世界共通であり、次のような最低限のマナーが挙げられる。

  1. 1.姿勢は背筋をまっすぐにして、キチンと座る。ひじをつかない。足を組まない。
  2. 2.口の中に食べ物を入れたまま、しゃべらない。口を開けない。
  3. 3.音を立てて食べない。
  4. 4.箸やフォーク、食器を正しく使う。
  5. 5.食べ物をこぼさない。
  6. 6.食事中、他のこと(スマホやテレビなど)をしない。
  7. 7.食事のあいさつ(いただきます、ごちそうさまなど)をする。
  8. 8.食べ物を残さない。

図1は、内閣府による「食事に関する習慣と規範意識に関する調査報告書」(2010年)による『不快と感じる食事の行為』を調べた結果である。以前は、当たり前に親から子へと生活の中で教わる作法であったが、核家族化・個食化などにより、今ではわざわざ学ぶ作法となっている。

図1 食事のマナーに対する意識(隣のテーブルでの他人の行為に対する意識) 内閣府2010年

また、会食時の同席する人への配慮として、

    1. 1.食事は席に揃ってから食べ始める、あるいは食べ終わるタイミングも同じくらいになるようにする。先に食べ始める場合は「お先にいただきます」と声をかけるなどの配慮が必要。
    2. 2.周囲の人との会話を適度に楽しむ。
    3. 3.同席する人でとり回す料理などは、均等に取り分けるようにする。
    4. 4.できるだけ中座しない。

などが挙げられる。


食前に「いただきます」と言うのは、日本だけと言われる。これらの言葉は、目の前の食べ物や、その食べ物をつくるために関わった人々への感謝の気持ちを表している。日本に禅を伝えた道元禅師は、その著書「典座(てんぞ)教訓」「赴粥飯法」の中で、禅寺の食事を司る典座という職務について説いているが、その中で「食べる側の心得」として「五観の偈(げ)」を説いている。

◆五観の偈

      1. 一つには、功の多少を計(はか)り彼(か)の来処(らいしょ)を量(はか)る。
      2. 二つには、己が徳行(とくぎょう)の全欠と忖(はか)つて供に応ず。
      3. 三つには、心を防ぎ過(とが)を離るることは貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす。
      4. 四つには、正に良薬を事とすることは形枯(ぎょうこ)を療ぜんが為なり。
      5. 五つには、成道(じょうどう)の為の故に今此の食(じき)を受く。

その意味は、

    1. 1.この食事がどのようにできたのか、それに関わった人々のご苦労を考え、それに感謝すること
    2. 2.自分が、この食事をいただくに値するかどうか、よく考えてから、食べること
    3. 3.むさぼることなどのないように、心を正しくして、食べること
    4. 4.ただお腹を満たすだけでなく、身体をいやす薬として食べること 
    5. 5.教えを全うするために、この食事を食べること
  • だろうか。

飽食の時代、改めて、「いただきます」「ごちそうさま」の意味を考えたい。


<参考HP>