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89-食品廃棄物と食品ロスの実態
1.食品リサイクル法
食品製造業、食品卸業、食品小売業及び外食産業など全ての食品関連事業者は、平成13年5月に施行された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(通称:食品リサイクル法)」によって、食品の売れ残りや食べ残し、または食品の製造過程で発生している食品廃棄物について、①発生抑制と減量化により最終処分量の減少を図るとともに、②資源(飼料や肥料等の食品循環資源)としての再生利用(マテリアルリサイクル)、または熱回収による再生利用等の取り組みを促進するよう義務付けられている*1。
*1 食品循環資源
食品廃棄物のうち肥料・飼料等に有効利用されるもの
2.食品廃棄物中の食品ロスの発生量
わが国では、国内及び海外から年間約8,339万トンの農畜水産物が粗食料あるいは加工用として食用に向けられている。一方で、図1に示すように、「食品廃棄物」が食品関連事業と家庭から年間合計2,797万t発生している。この食品廃棄物の中には、製造副産物や調理くずなど食用に適さないものだけでなく、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている「食品ロス」が含まれている(表1)。
食品ロスの発生量は、食品関連事業者から規格外品、返品、売れ残りや食べ残しなどが年間約330万トン、家庭から食べ残し、過剰除去や直接廃棄などとして年間約302万トンが発生しており、合わせて年間約632万トンの食品ロスが発生していると推計されている。
発生段階 | 加工品 | 日配品・生鮮食品 | |
食品関連事業者 | 食品製造業 | 規格外品・返品・余剰在庫 | 規格外品・余剰在庫 |
食品卸売業 | 返品・余剰在庫 | 余剰在庫 | |
食品小売業 | 売れ残り(返品しないもの) | 売れ残り(返品しないもの) | |
外食産業 | 賞味期限切れ・食べ残し | 消費期限切れ・食べ残し・過剰除去 | |
家 庭 | 賞味期限切れ・食べ残し | 消費期限切れ・食べ残し・過剰除去 |
3.食品ロスとその発生源
(1) 食品製造業・食品卸売業及び食品小売業からの食品ロス
これらの食品関連事業者からの食品ロスには、製造過程で発生する印刷ミス等の規格外品、「定番カット食品*2」や「納品期限・販売期限*3切れ食品」等の商慣習による返品、欠品防止のため保有し、販売できなくなった在庫品等がある。
(2) 外食産業からの食品ロス
外食では、セットメニューによる嫌いなものの食べ残し、食べられる量等が選択できないためによる食べ残しや過剰注文等による食べ残しが発生している。
(3) 家庭からの食品ロス
家庭からの食品ロスは、固い部分や脂っこい部分の除去、必要以上に皮を厚くむくことにより食べられる部分が廃棄される「過剰除去」、食卓に出された料理が食べ残された「食べ残し」、及び必要のない余分なものを購入したり、食品を冷蔵庫等の奥に仕舞い込んだままにしているうちに賞味期限切れ・消費期限切れになり廃棄される「直接廃棄」がある。
*2 定番カット食品
新商品や規格変更に合わせて店頭から撤去された食品
*3 納品期限・販売期限
食品製造業・卸売業・小売業が商慣習上、賞味期限までの間に設定した期限
4.食品ロスの生まれる要因・「期限表示の理解が不十分」
食品に表示されている期限には、「消費期限」と「賞味期限」がある。消費期限は「安全に食べられる期限」、賞味期限は「おいしく食べられる期限」であり、それぞれその食品の製造者や加工者が科学的、合理的根拠に基づき設定した期限である(詳しくは☞6章ー74参照)。消費期限は過ぎたら食べない方が良い期限であるが、賞味期限はその期限を過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるということではない。しかし、「消費期限切れ」と「賞味期限切れ」を同じ様に捉えて食品を廃棄する消費者がおり、期限表示の意味が十分に理解されていないことが食品ロスの生まれる要因の1つとなっている。
5.食品ロス削減に向けて
食料自給率が低水準で推移しているわが国の日常生活において、食料が豊富に存在することが当たり前のように国民に受け止められており、日本が発祥の地である「もったいない」という「物を大切にする精神」が薄れがちになっている。食料の安全供給を確保するためには、農畜水産業および食品産業の食料供給力強化と食品ロスの実態を理解して、削減を心がけることが必要である。
<参考文献>
- 農林水産省「平成27 年度食料需給表」
- 農林水産省「平成27 年度食品ロス統計調査」