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HOME MEAL MEISTER 08惣菜・弁当の製造から売場まで


96-惣菜の製造(3)非加熱調理、冷却・低温保管

惣菜・弁当には、刺身など生のまま食する「加熱調理のできないもの」や、生野菜サラダや和え物など「加熱しないで洗浄・殺菌した原料を使用する惣菜」がある。製造の際の安全のポイントをまとめる。

(1)洗浄・殺菌方法など

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写真1 下処理(上)と殺菌(下)

◆洗浄シンクは相互汚染のないよう、用途別に設置する。特に、加熱調理用食材のシンク、非加熱調理用食材のシンク、器具の洗浄等に用いるシンクは混同せずに、必ず使い分ける。

◆野菜原料は飲用水の流水で洗浄後、中性洗剤で洗う。流水で洗剤分を洗い流した後、次亜塩素酸ナトリウム溶液200mg/L (200ppm)に5 分間浸漬して殺菌する(生食用野菜の場合、亜塩素酸ナトリウムも使用可)。またはこれと同等の効果を有するもの(食品添加物として使用できる有機酸等)で殺菌する。

◆殺菌された食材は速やかに清潔作業区に移し、調整(盛り合せ)する。キット化された食材を使用する場合は、「ビニール袋の開封手順」を遵守する。

◆一時保管する際には、二次汚染防止を第一に清潔な場所に置き、盛り付け室は低温に保つ。

    • ◆野菜の殺菌方法

サラダの保存性に一番影響するのが「初発菌数(初めの細菌数)」であり、製造工程からの汚染と原料に付着して持ち込まれた菌がその主な原因である。野菜には多数の菌が付着しているにもかかわらず、鮮度が要求されるため除菌,殺菌方法が難しい。 サラダの原料のうち生野菜に付着している菌が特に汚染源になりやすく、野菜を水洗いしただけでは1万~10万/gの菌が残存していると言われる。特にトマトのヘタや、キュウリのイボなどは洗いにくい。

惣菜・弁当の製造現場では、野菜の種類によって殺菌に用いる薬剤の濃度や浸漬時間を変えたり、可能なものについては熱湯で軽く茹でる「ブランチング」を行ったりと、初発菌数をできるだけ減らす工夫をしている。

(2)非加熱調理

非加熱調理の調整作業には、二次洗浄、細切り、計量、混合、調味などがある。調理室や盛付け室の室温は16℃前後の低温に保つことが基本である。

殺菌された非加熱調理用食材は速やかに清潔作業区域に移し、できるだけ早急に調理に使用する。調理場等で一時保管する場合には、他からの二次汚染を防止するため、清潔な場所に置く。なお、手指を介した二次汚染を防止するために、加熱後の食品や非加熱食品を取り扱う際には、衛生手袋を必ず着用する。

◆おいしさのポイント

  • ●ポテトサラダ
    • ジャガイモを皮付きのままで茹でて(蒸して)皮をむく。熱いうちに下味を付けてから潰すと、味がしっかり付いて、ジャガイモの風味が増す。味付けのマヨネーズには酢が入っているので菌の繁殖を抑える作用もある。
  • ●サラダドレッシング
    • 夏には、さっぱり感を出すために通常よりも酸味を足す。これは制菌作用にもつながる。
  • ●和え物
    • 調味すると食材から水分が出て味が薄まり、最初に設計した味ではなくなる。それをできるだけ防ぐために、調味の前に、遠心脱水など、食材の脱水をする。

一般的に微生物は、温度・栄養素・水分・pH等の条件が揃えば、簡単に増殖する。食品は栄養素・水分・pHについて微生物の繁殖条件を兼ね備えているが、温度は人がコントロールすることが可能であり、温度管理を正しく行って、製造した食品の温度を微生物の増殖を抑えられる温度域で保管することで、微生物の繁殖を抑えることができる。

調理後の冷却は、冷却機を用いたり、清潔な場所で衛生的な容器に小分けするなどして、菌が繁殖するのに適した温度帯(約20℃~50℃)をできる限り、早く通過することが衛生管理上のポイントである。厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、中心温度が30分以内に20℃付近、または60分以内に10℃付近に下げることとしている。大規模工場等ではさらに厳しく、冷却能力の高い「真空冷却機」などを用いて、30分以内に中心温度10℃以下に冷却するなどしている。

冷却時間が長ければ、その間に空気中の細菌が再付着したり、細菌の繁殖が活発化する危険性が高いため、迅速な冷却が求められる。冷却後、製品の保存温度は10℃前後に保つ。

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写真2 冷却温度の確認(左)、冷却機(右)