HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通
11-野菜・果実の品種、品種改良
1.品種と品種改良
「品種」とは、「同一種の栽培植物や飼養動物で、形態や性質の変異が遺伝的に分離・固定されたもの」とブリタニカ百科事典にはある。
現在、私達が食用にする栽培作物のほとんどが品種改良を重ねてきたものであり、「品種改良」とは、作物を私達の嗜好に合うように、あるいは高い収穫量、冷害や高温への耐性など、生産者や消費者の望むような特性をもった品種を開発することである。
作物の品種改良は、異なる品種を人工的に「交配(花粉をめしべにつけて受精)」することを基本としており、母親と父親の長所を生かす組み合わせを選び人工的に交配する作業を何代かに渡って繰り返し、より良い品種を選抜するというものである。そのため、品種改良には多くの時間と労力がかかる。
目的の品種にたどり着くまで、野菜では数年、果樹は十数年かかると言われている。最近では、遺伝子解析などで求める形質を発現するDNAを見つけて、それを目印として、苗のうちに選別できるDNAマーカーを利用した技術も確立され、品種改良のスピードアップに貢献している。さらに遺伝子組換えにより品種改良の技術も確立されているが、日本国内で食品として利用するには、その安全性や環境への影響の評価が義務付けられている。食用ではないが、遺伝子組換え技術でできた「青いバラ」は実際に販売もされている。(☞2章-16参照)
2.F1種と固定種・在来種
(1)雑種第1代(F1種)
異なる性質の親を交配した次の代は「雑種第1代」と呼ばれる。雑種第1代は「1代雑種」「F1(エフワン:first filial generationの略)」「ハイブリッド」とも呼ばれ、親の優れた性質を受け継ぎ、収量・品質・耐病性などの向上が期待できる。ただしその性質は1代限りで、F1の種から育てた雑種第2代は形や性質にバラつきが出る。種苗会社ではこうして作り出した1代雑種の中から特に優れた性質のものを選び、交配種として販売している。主食となる米は何世代もかけて性質を固定してきたが、野菜の交配種は1代雑種に限られている。
(2)固定種・在来種
「固定種」や「在来種」という言葉を聞いたことがあるだろうか。固定種とは、多くの種を蒔いて生育させ、その中の栽培目的に合わないものを取り除き、何世代もかけて選抜淘汰をくり返して、病気に強い・食味がよいなどの目的の形質を固定していく。全国各地で栽培されている伝統野菜と呼ばれている在来品種や地方品種の多くが固定種である。
在来種とは、正確な言葉の定義はないが、外来の品種と交わらず、農家が種を取って代々伝えてきた品種のことで、ある地域で伝統的に栽培されてきた作物を「伝統野菜」「地場野菜」などともいう。最近では、京野菜、石川の加賀野菜などの地場野菜が注目を集めている。
3.加工・業務用への品種改良
食の外部化が進み、野菜の加工・業務向けの需要が高まっている。そのため、青果物にもそのニーズに合った品種が求められる。安定した品質で低コストであること、さらには加工・調理に向く形・大きさや品質、また栽培方法、収穫後の流通プロセスなども考慮した品種改良が進められている。
<参考HP>
- 農林水産省広報誌aff 2011年11月号「食の未来を拓く 品種開発」
- 一般社団法人バイオインダストリー協会 「みんなのバイオ学園」
- 農林水産省 DNAマーカー育種
- 農林水産省「新品種・新技術の開発・保護・普及の方針」
農林水産省「遺伝子組換え技術等の先端技術の農業・食品への応用について」 - 島根県農林水産総務課HP