HOME MEAL MEISTER 04健康と栄養
43-食物アレルギー
1.食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、特定の食品の摂取によって、その食物に含まれるたんぱく質を免疫系が「異物」と認識し、じんま疹・湿疹などの皮膚症状、下痢・嘔吐・腹痛などの消化器症状、鼻・目粘膜症状、咳や呼吸困難などの呼吸器症状といった、いわゆる「アレルギー症状」が起きる疾患のことである。
重篤な場合には、血圧低下や意識障害などの「アナフィラキシーショック」が起こり、生命が危険になる場合もある。アナフィラキシーショックの症状が出た場合は、即座に119番通報し、救急車を呼ぶとともに、個人の携帯している緊急の注射薬を打つ必要がある。個人により症状の種類や出方が異なるため、微量でも重篤な症状に陥る場合があるので、注意が必要である。(アレルゲン表示については☞6章-75参照)
2.食物アレルギーと発症年齢
乳幼児は消化吸収機能が未発達であるため、ミルク・母乳中や離乳食中の食物たんぱく質が原因となり、食物アレルギーが発症する。乳幼児の場合は加齢とともに80~90%は耐性を獲得すると言われるが、学童・成人で新規に食物アレルギーを発症した場合は、耐性は得られにくいと言われている。
食物アレルギーの頻度は、診断の基準や調べ方によって変わってくるが、乳児で5~10%であり、年齢とともに減少し、幼児で約5%、学童期以降が1.5~3%と推測されている。食物アレルギーを起こす頻度の高い食品は発症年齢により多少異なる(表1)。
表1 食物アレルギーを起こす頻度の高い食品と発症年齢
発症年齢 |
発症頻度の高い食品 |
乳児~幼児 |
鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類など |
学童~成人 |
甲殻類、魚類、小麦、果実類、そば、落花生など |
3.アレルギー物質(アレルゲン)
アレルギー症状を引き起こす物質をアレルゲン(抗原)という。アレルゲンの多くはたんぱく質であり、加熱すると構造が変化して、アレルゲン性(抗原性)が失われたり弱くなったりすることがある。以前は「鶏卵、乳製品、大豆」が「3大アレルゲン」と言われたが、最近では大豆が減少して「鶏卵、乳製品、小麦」が3大アレルゲンとなっている(グラフ1)。また、これら以外にも様々な食品に対するアレルギーが増加している。
鶏卵は「食品アレルギー」の原因食品の1つである。卵白中のたんぱく質「オボムコイド」が最も強力なアレルゲンで、このたんぱく質は水に溶けやすい性質がある。また、たんぱく質は熱で性質が変化するため、卵のアレルゲン性は加熱によって大きく変化し、加熱温度が高く、加熱時間が長い程、アレルギーは起きにくくなる。鶏卵アレルギーは乳幼児に多くみられるが、成長するにしたがって消化管や免疫機能が発達して症状の改善がみられ、食べられるようになることも多い。
0歳(n=678) | 1歳(n=248) | 2-3歳(n=169) | 4-6歳(n=85) | 7-19歳(n=105) | 20歳以上(n=90) | |
1位 | 鶏卵 55.6% |
鶏卵 41.5% |
魚卵 20.1% |
ソバ 15.3% |
果物類 21.9% |
小麦 23.3% |
2位 | 牛乳 27.3% |
魚卵 14.9% |
鶏卵 16.6% |
鶏卵 14.1% |
甲殻類 17.1% |
甲殻類 22.2% |
3位 | 小麦 9.6% |
牛乳 8.9% |
ピーナッツ 10.7% |
木の実類 11.8% |
小麦 15.2% |
果物類 18.9% |
4位 | ピーナッツ 8.5% |
牛乳 8.9% |
果物類・ 魚卵10.6% |
鶏卵 10.5% |
魚類 12.2% |
|
5位 | 果物類・小麦 5.2% |
小麦 8.3% |
ソバ・ 魚卵 6.7% |
平成20年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査より
◆アレルギーとアレルゲン
アレルゲンは、アレルギー(allergy)とアンチゲン(antigen、抗原)とを合成した造語で、ドイツ語の医学用語である。つまりアレルギーはその「症状」で、アレルゲンは「アレルギー物質」のことをいう。