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44-生活習慣病
1.生活習慣病とは
成人期以降では身体機能が低下し、生活習慣や食生活の積み重ね、ストレス等により生活習慣病や慢性疾患が進行しやすい。生活習慣病は食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の習慣的な危険因子が発症・進行に関与するといわれ、主に成人期に発症するが、最近では、若年時にも生活習慣病の傾向がみられることが報告されている。生活習慣病には糖尿病、高血圧症、虚血性心疾患、骨粗鬆症、脳血管障害、悪性新生物(がん)などがある。
(1)肥満、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
肥満の判定法は、成人では「BMI(Body Mass Index)」が広く用いられている。さらに最近では、生活習慣病との関連から「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の概念が入り、判定されている。メタボリックシンドロームになると、生活習慣病になるリスクが非常に高く、特に循環器疾患や動脈硬化になりやすい。
①BMI(Body Mass Index)
BMIは[体重(kg)/身長(m)2]で表され、広く使用されている。WHOの基準もあるが、日本では日本肥満学会での判定(表1)を使用している。
表1 肥満の判定基準(日本肥満学会)
BMI値 | BMI値 | ||
やせ | 18.5未満 | 肥満Ⅱ度 | 30以上、35未満 |
普通 | 18.5以上、25.0未満 | 肥満Ⅲ度 | 35以上、40未満 |
肥満Ⅰ度 | 25以上、30未満 | 肥満Ⅳ度 | 40以上 |
②メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
「メタボリックシンドローム」とは、内臓脂肪の蓄積(腹囲が男性85cm以上、女性が90cm以上)に加え、表2の「血中脂質、血圧、血糖」の基準の2つ以上に該当する場合をいい、1つに該当する場合はその予備群と考えられている。メタボリックシンドロームの状態が長く続くと生活習慣病を引き起こすことにつながるので、生活習慣病予防のために重要であるとして、徐々に世界的に広がり、内臓脂肪を必須項目とした診断基準が各国で整いつつある。
表2 メタボリックシンドロームの診断基準(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会)
内臓脂肪(腹腔内脂肪) 蓄積 |
腹囲(ウエスト周囲径)男性:85cm以上、女性:90cm以上 ※内臓脂肪面積100cm2以上に相当(男女とも) |
||
項目 | 血中脂質 | 血圧 | 血糖 |
基準 | ・中性脂肪(TG)150mg/dl以上 (高トリグリセライド血症) かつまたは ・ HDL−コレステロール値40mg/dl未満 (低HDL−コレステロール血症) |
・収縮期血圧 130mmHg以上 かつまたは ・拡張期血圧 85mmHg以上 |
・空腹時血糖 110mg/dl以上 |
(2)糖尿病
糖尿病は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの分泌不足や働きが悪くなり、体内でのブドウ糖の利用阻害が起こり、血中のブドウ糖が異常に増加する病気である。幼児期に発症するⅠ型(インスリン依存性) と、成人期に肥満や食生活の乱れにより発症するⅡ型糖尿病(インスリン非依存性) がある。総エネルギーを制限してたんぱく質、脂質、炭水化物のバランスの取れた食事が大切である。
(3)虚血性心疾患
動脈硬化が起こっている時に、血液の流れが悪くなったり、止まったりして起こる心臓病を「虚血性心疾患」といい、“狭心症”や“心筋梗塞”がある。危険因子は高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病、喫煙、ストレスなどが挙げられている。背の青い魚(いわし、さば、さんま、ぶり等)に多いn-3系多価不飽和脂肪酸イコサペンタエン酸(IPA、慣用名EPA) やドコサヘキサエン酸(DHA)等は、血栓を作りにくい生理活性物質を作り、血栓形成を予防する効果があるといわれている。
(4)脳血管疾患
脳の血管に血流障害が起こる。脳出血は血管が破れて出血するものであり、高血圧が誘因となることが多く、たんぱく質の少ない食事や血清総コレステロールの低値が発症を促進すると言われている。脳梗塞は脳の動脈の一部が狭くなり、血栓が付着して血液の流れが悪くなる病気である。
(5)悪性新生物(がん)
がんの原因は発がん性物質や放射線、ウイルス感染、喫煙などが挙げられるが、食物との関連も報告されている。発がん作用にはイニシエーション(誘発、引き金作用)とプロモーション(促進作用)の段階がある。発がん作用を抑制する栄養素は抗酸化作用のあるビタミンAやβ‐カロテン、ビタミンC、ビタミンEや食物繊維等で、これらを多く含む緑黄色野菜・果物・海藻類などの摂取を心がけたい。
(6)骨粗鬆症
加齢とともに骨量が減少し、骨の組織が萎縮することから骨がもろくなる。予防のためには、骨量を十分に増やしておくことが重要で、食事は乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)、骨ごと食べられる小魚、緑黄色野菜、海藻に多く含まれるカルシウム(Ca)を十分に摂り、腸管からのCa吸収促進や骨へのCa沈着に関与する「ビタミンD」も不足しない様にする。若い時からの適切なCaとビタミンDの摂取、日光浴や散歩、適切な運動の実施など、積極的な対策が大切である。