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6-世界の食料そして、飢餓と飽食
1.世界の食料生産
日本は人口が減少に転じているが、世界的には人口は開発途上国を中心に増加を続け、また同時に経済発展もめざましく、肉食を中心とした食生活を営む人が増える可能性がある。さらに、地球温暖化など気候変動による生産の不安定化要素は無視できず、食料の需給*1は、非常にひっ迫した状況にある。
といっても、すぐに食料危機がやってくるという意味ではなく、生産技術も向上しており、世界の穀物の耕地、単位面積当たりの収量(単収)、耕作面積は微増であるが、農業技術の改良により収量は増えている。しかし、今日の農業が膨大なエネルギーや水を必要とする*2ことを考えれば、私たちはできるだけ無駄なく商品を利用するように努めなければならない。
*1 需給
需要と供給のバランスのこと。
*2 農業生産に投入される水
米1kgを収穫するのに3600リットル、牛肉1㎏では20000リットルの水が必要と言われ、牛丼1杯を作るのに1890リットルの水が必要であるという試算にある。(東京大学生産技術研究所の沖大幹教授の試算による)
2.飢餓
全体としてみれば、食料の供給は足りているように見えるが、その分配がうまくいっていないのが現状である。FAO(世界食糧機関)によれば、2014年から2016年の世界の飢餓人口は7億9,500万人で、9人に1人が飢餓状態にある。WFP(世界食糧計画)によるハンガーマップ(図1)によれば、サハラ砂漠以南のアフリカ、アジア、中南米の国々において、栄養不足に陥っていることが見てとれる。飢餓や栄養不足の状況は改善されつつあるが、政情不安などの社会的要因によるものも大きく、栄養の質、水や衛生状況の向上、教育の必要性が求められている。
3.飢餓と飽食
飢餓の一方で、先進国は飽食という贅沢な悩みをもつ。飽食であるが故に、肥満人口が増大している。過体重と肥満の人の数は、1980年に8億8,500万人だったのが、2013年には2.5倍の21億人にまで増加している。図2は、WHO(世界保健機関)による過体重(BMI*325以上)の割合を地域別に示したものであるが、北米、ヨーロッパを中心に過体重の割合が高い。肥満が様々な生活習慣病を引き起こすことは明らかなことであり、飽食が遠因となって命を落とす人も増えている。飢餓と飽食が同時に進行する、現代の世界は何とも皮肉な状況にある。
*3 BMI
体重(kg)/[身長(m)]2で計算される数値で、栄養指数として広く使用されている。日本では日本肥満学会での判定(25以上が肥満、18.5以上25未満が正常18.5未満がやせ)を使用している。
4.もうひとつの飽食
地球の裏側で食べ物が満足に食べられず命を落とす人が多くいる一方で、私たちはたくさんの食べ物を捨てている(☞7章-89参照)。現在、世界で生産される食料の3分の1が捨てられているという報告がある。日々の惣菜製造・販売業務や家庭での買い物や調理の時など、1人1人が少しずつ意識することが必要である。